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4つの資源から考えるブランドマネジメント組織の作り方

ブランドマネジメント制に移行したいと考えていても、その体制をどのように構築すればいいものか、なかなか明確なガイドラインも見当たらないものです。その具体的な方法を仔細に示すことはこの記事の主眼ではありませんが、なすべき概要を示すことは、これから組織構築という大事業に臨む際に役に立つかもしれません。簡単な指針として、参考にしてみてください。

 

はじめの一歩を踏み出す前に:ビジョンを掲げる

最初になすべきことは、どのような組織になりたいかを明示することです。行き先が決まらなければ、はじめの一歩をどの方向に向ければいいか分からないはずです。

とりあえずやってみる、というのは好意的に捉えられることが少なくないですが、闇雲な一歩は闇雲な一歩でしかなく、実効性のない空虚な達成感に帰結するだけで、前進するにはあまり役に立ちません。5年後、10年後にどのような組織になっていたいのか。あるいはどのような組織であると社内外の人々に認識されたいのか。分かりやすく、かつ魅力的に示してみましょう。

ビジョンですから、荒唐無稽では困りますが、確実な達成可能性を示す必要はありません。方向が分かり、メンバーが魅力を感じてやる気になれるものであることが重要です。

 

戦略的に考える:組織構築の目的を示し、そのために使える資源を洗い出す

ついで、もう少し具体的な目的を示しましょう。どのようなことができるようになりたいのか。どのような能力を持ちたいのか。ブランドの持続的な成長を実現できるようになる、といった表現があればイメージを持ちやすいと思います。ここに、3年連続で年率5%以上成長する、などといった数値が付随しているとさらにいいでしょう。そして、その組織が有する主要な資源をリストアップしてみましょう。多くのブランドマネジメントにおいては、よくあげられるように、ヒト、モノ、カネ、そしてジョウホウが主要な資源として考えられることと思います。

 

ヒト

強力なマーケティング組織を構築する際には、「自分はプロフェッショナルとしてマーケティングを習得したい」というメンバーのコミットメントが重要です。もし、ジョブローテーションがこの意図を挫いてしまうのであれば、その一部や全部を抑制するのも手かもしれません。3年後に他の部門に異動することが確実なのであれば、マーケティングを習得したいという気持ちが弱くなったとしても不思議ではありません。ジョブローテーションを否定するものではありませんが、3年間で習得できる技術はそれほど高いものではないことは理解しておくべきでしょう。特に、競合ブランドが手練れのマーケターで構成されているのであればなおさらです。

 

そして、長期にわたってマーケティングに従事するプロフェッショナルを擁するのであれば、彼らのキャリアパスやキャリアプランも構築する必要があります。キャリアパスを示すときには、「何年経ったら、どの職位に昇進する」というよりも「どのような能力や技術を身につけたら、次の育成段階に入るためにどういった異動・昇進をする」とした方がいいでしょう。年功による秩序よりも実践における効用を期待するのであれば、年数ではなく、能力や技術で人材を評価・管理するのが正しいと思われます。そのためには、スキルやコンピテンシーの包括的なリストと、それぞれの段階で身につけるべきレベルを示すことも重要です。このリストは、メンバーの評価や異動をマネジャーたちの主観ではなく、なるべく客観的に管理する際に必要になります。

 

モノ

多くのブランドは製品を通してブランドの約束事を提供したり、ブランドの体験を提供したりしています。ここでいう製品はモノそのものであることもあれば、サービス内容のこともあるでしょう。研究者やエンジニアが開発した「いいモノ」に適当な名前をつけて売る、というのはビジネスのやり方の一つではあります。しかし、それでは十分なブランドマネジメントではありませんし、必ずしも立派なブランドが確立されるものでもありません。ベネフィットにもとづく明確な意味をブランドとして定義し、製品に代表される全ての4P(Product、Price、Place、Promotion)要素による消費者との接点で、ブランドの意味を具現化し、ブランド体験を提供し、長期的な利益の最大化を図るのがブランドマネジメントです。(いずれ、利益率とブランドの存在理由が明確になることによって苦労が報われることになります。)モノとブランドの一貫性を担保するためには、そのブランドが提供するベネフィットが何で、対象となる消費者が誰なのか、示しておく必要があります。このブランドの定義によって、4Pの代表的な要素である「モノ」のありようを方向づけることができます。

 

カネ

ブランドマネジメント組織を構築する際に、最も重要で最も困難な作業のひとつが、ブランド別のP/Lを作り上げることです。地域別の販売部門毎に売上管理をしてきた企業では、地域毎の売り上げや利益は分かっても、ブランドごとの把握がとても困難だったり、仕組み上うまくできなかったりすることがあります。ブランドマネジメントに長らく従事していると信じられないことかもしれませんが、広く企業を見渡せば、あまり珍しいことではないかもしれません。場合によっては、ブランド毎の利益だけでなく売上額さえ明確ではないこともあるでしょう。これでは、マーケティングROIなどマーケティング投資に対する効果の測定も困難を極めます。マーケティング部門が売り上げや利益に関心を示さない、という悩みをお持ちであれば、この辺りを改善する必要があります。

 

ジョウホウ

去年できなかったことを来年できるようになることが成長であると理解すれば、その間にあるのは経験などを含む広い意味での「知識」です。個人でも組織でも、成長のためには知識の効果的・効率的な収集、蓄積、流通が極めて重要です。自律的で持続的な組織成長を実現するための最重要の要は、こうした知識を含む情報管理の巧拙であるといっても過言ではありません。

 

知識がうまく蓄積せず、散逸してしまう理由のひとつは、「知識の収納用の棚」がないことです。収納できないから散らかって、いずれなくなってしまいます。組織で知識を共有する「知識の棚」を作るためには、共通言語の確立が重要です。そのために、以下の要素を整えることが効果的です。

 

①戦略、マーケティング、ブランドなど極めて重要でありながら解釈や意味が曖昧になりがちな単語の意味を明確に定義し、浸透させる。

②「モノ」の項目で言及したように、ブランドを定義するフォーマットを揃えて正しく適用する。

③パーセプションフローモデルなど、ブランディングやマーケティングの設計図を統一することで、活動毎に得られる経験を知識化しやすくする。ブランド毎に得られるラーニングの互換性を高めることにもつながる。

④提案など、考え方のプロセスを統一することで考え方を効率化し、組織全体の思考速度を上げる。

⑤活動ごとのラーニングを最大化できるよう、「レビュー(振り返り)」をオペレーションのプロセス内に仕組みに取り込む。

⑥特化した知識獲得のために、実験プラン用の予算を用意し、財務的なリスクを管理しつつ冒険的な試みを促す。

⑦経験の経験値化や知識の蓄積、流通を尊ぶ組織文化を確立する。

⑧メンバー間の有機的な知識交換を促進する仕組みを作る。

⑨部下や後進の指導をマネジャー評価の必須項目とする。

 

以上の働きかけをすることで、自律的・持続的な組織成長、ひいてはブランドの確立や成長を実現する組織構築・強化ができるようになります。